地域おこし協力隊としての最後の視察が、戸田商行さんで良かったと思った一日でした。
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『もくめん(木毛)』って皆さんご存知でしょうか。

どの様にして利用されているのかというと、主に商品の『緩衝材』として利用されています。最近でこそプラスチックや紙のパッキンや緩衝材が主流ですが、石油製品が今ほど開発されていなかった時代ではもくめんも多く使われていた様です。しかし安価な石油由来の緩衝材が主流になった現在は以前の様に手広く使われる事もなくなり、高級な果実・食材やガラス製品、お酒などに使われる事が多いようです。
なんかこの下りは経木で聞いたような話で、シンパシーを感じてしまいます。
そしてこの『もくめん』を日本で唯一”専業”で製造・販売されている工場が、ここ高知県の土佐市にあり、会社の名前は『戸田商行』と言います。
そして今回、隣街で活動している地域おこし協力隊の仲間に誘われ、私ももくめんと戸田商行さんに興味があった事から同行させてもらう運びとなりました。

受付で挨拶を済ませていると、奥の事務所から社長の『戸田実知子』氏が出てきて下さり快く迎え入れて下さいました。
そして事務所へお通し頂き、早速様々な事について質問や提案、その他色々な事についてお話頂きました。
今回の訪問は本山町地域おこし協力隊の渥美氏が企画したものなので、話の中心は渥美氏が行い、ポイントポイントで私が質問等を挟むといった感じで進んでいきました。
そもそも何故渥美氏が戸田商行様へ伺いたかったのかという理由ですが、嶺北地域に多く有りブランドとして確立されている『嶺北杉』の新たな活用方法について考えていたところ、商品としての特性は勿論ですが、企業理念や社長の人柄等に惹かれて今回アポを取った様です。
渥美氏は嶺北杉ともくめんのコラボ商品の提案について企画提案書を用意しており、その後はその資料を基に話を進めていました。
企画書は私が作成したものではないのでここで記載するという事はしませんが、今回渥美氏から提案されたものはいずれも過去に戸田商行様の社内で企画が上がっており、様々な理由で断念されたというものでした。結果としては残念でしたが、ただ『ダメだった』というだけでなく、『なぜ断念したのか』という過去のリアルな試行錯誤を知る事が出来たのは、私達にとって大きな収穫でした。
そして私の話をすると、協力隊が終了した後は経木を副業でやろうと考えているという事を話しましたら、それはもう同じ『伝統的な木製品』を扱う者として温かい激励と深い共感をいただきました。というのも話を深掘りしていくと、もくめんと経木は実は似通ったところがいくつかあるという事がわかりました。
例えばいずれも昔の機械を大切にメンテナンスをしながら使っているというところです。どちらも新規で製造しているメーカーは無く、また経木以上にもくめん製造機の方が現存している物がありません。
しかし、だからこそ戸田商行様では色々な縁を繋いで新規でもくめんの機械を製作する事に挑戦したという話を伺えた事は大変興味深く面白いものでした。一介の物作りではなく『郷土文化』という視点で見る事で、「なるほど、そういうやり方があったか🤔」と思わず唸らずにはいられず、目から鱗でした。
他には『生木』を使っているところも一緒です。木材は大抵の場合乾燥させたものを使う事が多いですが、経木ももくめんもその特性ゆえにある程度湿った状態でないと削り出す事が出来ないんですよね。
また、勉強の為に伊那の『やまとわ』さんへ行った事も話すと、戸田様も『やまとわ』さんをご存知でその事でまた色々と話が弾みました!自分の為に色々と出歩いていた結果が、こうやって色々な人と繋がってくるのが人生の面白いところと感じます。
そして、その後は工場見学に移ります。

最初に案内されたのは原木置場です。特徴としては原木の上から散水をする仕組みを取っていて、原木が乾燥しない様にしています。経木もそうですがもくめんも水分が大事なんだと、ここで感じました。

工場内に入ると早速もくめん製造機械がお出迎えです。一番奥にある機械以外が稼働しており、がんばってもくめんを削りだしていました。その時は気にならなかったのですが、今思い返すともくめんの機械って静かでした。経木は1台でもけっこう大きな声を出さないと相手の声が聞き取りにくかったですが、工場内は6台の機械が稼働していても普通の声の大きさで話せました。

木取りの仕方は違いますが、節が大敵なのも経木と一緒です。木取りの仕方で歩溜りが大きく変わるので、このあたりは経験が求められるところになります。

高速で動いているので刃物部分についてはさっぱりわかりませんが、1方向だけでなく2方向から刃が出て動いているらしいです。

削りだされたもくめんは機械の裏側に落ちて、ベルトコンベヤーで運ばれます。


ベルトコンベヤーで運ばれたもくめんはこの乾燥機に移されて、約10分程かけて乾燥されます。乾燥はこの1回のみとの話でした。経木は2回あるので、ここは大きな違いかもしれません。
また、乾燥機の熱源はもくめん製造段階で出た木片等を使っているので、1本の原木を余すことなく活かしているという事になります。昔の技術が、昔の製品が、こうやって実は今時代を先取りしているというのは、凄くイケてると私は思います。私が経木に惹かれた理由もそうだったりしますし。



以上がもくめんの製造過程になります。
また、戸田商行さんではもくめんだけではなく、『MICIL』というブランド名でアロマオイルの製造・販売も行っており、アロマオイルの蒸留設備も見学させて頂きました。アロマオイルのラインナップは『桧』『杉』『文旦』の3種類があり、そのなかでも『文旦』が一番目を引きます。

土佐文旦自体、高知県が全国生産の9割を占めているのですが、その中でも戸田商行さんの在る土佐市は県内屈指(つまり日本屈指とも言える)の生産地であり、地域に既にありしかも一番力のあるコモディティを上手く活用していると感じました。柑橘のアロマオイルは沢山ありますけれど、土佐文旦のアロマオイルはなかなか見ないですよね、少なくとも私は今回の訪問で初めて見ました。
また、興味深かったのは、アロマオイルに使う文旦は一般商流に乗らないB級品を利用して、価値になり難いものに付加価値をつけている点です。
これを聞くと一般的には「B級品なんてたくさん出るのだろうから、集めるのは簡単じゃない?」と思いがちですが、実態はA級品よりも収穫される数量にムラがあり、欲しい数量が集まるか毎回ドキドキしている、という話をされていました。
文旦の皮むき作業(文旦に限らず柑橘のアロマオイルは果皮を蒸留するのがメイン)も地域の福祉施設に協力を依頼している事(いわゆる『農福連携』)だとか、アロマオイルもただのアロマオイルではなく、その奥に様々な物語や繋がりを感じる事が出来て、大変感銘を受けました。まさに私が経木ビジネスで体現したい『地のものを使う正当性と物語』の理想の形が、ここ(戸田商行)にありました。

感想
今回、ひょんなことから念願が叶って戸田商行様を伺う事ができて、代表取締役の戸田様と直接お話をする機会が得られたことは、今後の活動にとって大変貴重な学びとなりました。この場を借りて改めて御礼申し上げます。
伝統的な商品・技術というのは時として進化や成長を恐れるもので、その結果として衰退や消滅という結末を迎える事も多いもので、もくめんもそれは決して他人事ではなく非常に厳しい環境に置かれていましたが、戸田商行様では不断の努力でそれを乗り越えて現在に至っています。
それも偏に、『木の文化、森の文化を大事にして欲しい』という想い、そして高知の豊かな自然や地域社会を次世代へ繋ぎたいという、ブレない軸(企業理念)があるからこそだと強く感じました。
しかし戸田商行様の本当に凄いところは、そうした『守るべき伝統』を持ちながら、マーケティングにおいては常に『最先端の攻めの姿勢』を崩さない点です。
技術や歴史を大切にする一方で、SNS発信等に力を入れているのにも感心したのですが、何より驚いたのは、戸田さんの口から『SEO対策』ではなく、その先の『AIEO対策(※)』という単語がすらっと出てきたことです。これには感嘆の一言でした。
※AIEO対策…ChatGPTやGeminiなどの生成AIが回答を生成する際、自社サイトの情報を「根拠」として引用・推薦しやすくするための施策
『温故知新』という言葉がありますが、時代に選ばれる企業というのは、守るべき伝統や軸を持ちながらも、手段においては常に進化し続ける。そして、それでいて地域にしっかりと根を張っているものなのだな、ということを物凄く実感した一日でした。

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